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東西ドイツにおける敗戦直後の喪の作業

シンポジウムからはや一週間経ってしまいました。が、まだ書いておこうと思っているものがあるので、続き。もうひとつURSS関連で、ベロモルカナルという、白海とバルト海をつなぐ運河の建設にまつわる本についての発表 .....続きを読む
2006.12.10[Sun]  発信元:L'ECUME DES JOURS ~日々の泡~  

ベロモルカナル建築についての書

先日、「歴史と記憶」についてのシンポジウムがあったので、日本から来られた先生方のお手伝いも兼ね聴講してきた。「フランスにおける植民地主義」「日本の歴史教科書問題」「靖国問題」「アルジェリア独立戦争時における慰安婦問題」「オーストリアにおける記憶の問題」「カンボジア-記憶と否認」「ナチスの記憶に関する西・東ドイツの違い」「帝国主義ダーウィニズム」「クラフチェンコ事件」などである。(shibaさんブログでも最近のエントリーで取上げられている。
なかでも個人的には、Annie EPELBOIN助教授の(パリ第8大学ロシア文学。専門は20世紀。)「ベロモルカナル建築についての書」に関する発表が印象に残った。日本語で検索してもほとんどHITしないこともあり、ここにメモを残しておこうと思う。

以下はAnnie EPELBOIN助教授の発表の要約。*
「ベロモルカナル建設についての書」は、スターリンが五ヵ年計画の一環として最初に着手することになる、白海とバルト海を結ぶ運河の大事業についての報告書である。しかし単なる報告書ではなく、スターリンが当時著名だった文学者120名を召集して書かせたプロパガンダの書として知られている。この問題の書は、33年には脱稿され初版で10万部刷られ、翌年の夏に開催された第一回ソ連作家会議では、大々的に取上げられ革新的作品として多くの賛辞を受けることになる。英語を始めとし数ヶ国語に翻訳されたこの書は、まさにスターリニズムの理想を世界中に伝播するために各国に送られた。突如として世に現れたこの書は、出版直後は大成功を収めたと言われている。しかしながら、数年後ソ連当局による回収作業が行われるという運命にあった。諸外国の図書館に厳しい検閲の末に収められたものも、同時に回収され破棄されることになったのはいかなる理由によるのか?
EPELBOIN助教授はこれについての解答を直接的には与えてくれなかったが(聞き逃したかもしれない)、発表全体の内容から判断すると以下のような理由からであると思われる。つまり、遅かれ早かれ発覚するプロパガンダの虚偽性に関わることなのであるが、問題の書に書かれている内容と現実との隔たりが、徐々に明白になってきたということからである。これはソ連における強制収容所の現実が、問題視されてきただけの話ではない。それ以上に、建設のために天文学的な数の犠牲者を出したにも関わらず(死者10万人以上とも言われるが、ソルジェニーツィンによると25万人に上るとされる)、突貫工事(全長227Kmの大工事が20ヶ月で完了したとされる。因みにスエズ(168Km)は10年、パナマ(64Km)は11年と比較すると、スターリンの狂人度が理解されよう。これに冬の過酷な寒さのなかでの素手による作業という非人道振りも加わる。)によってとりあえず完成した運河がまったく機能しなかったという悲劇の故である。スターリン自身も、このことは想定外だったかもしれない。しかしながら、運河としての実用性という問題は、ここでは最重要事ではなかったようである。それというのも、この計画で最重要視されたものは、新しい社会創設のための新しい神話を創造することが目的だったのだから。結局、ツァーが夢見て実現できなかった運河を、自らの権力で実現させるということが、スターリンの政治的野望にあったわけである。
さて、この新しい神話の創造に、スターリンが援用したスローガンはperekovkaという言葉に要約されるとEPELBOIN助教授は言う。ここで「改鋳」と訳される言葉で問題になっていることは、「新しい人間」の創造の問題である。これはマルクスの有名な言葉~人間は自然を変革し、また自らも変革を受けるからも予想されるものであるが、スターリニズムにおける恣意的な解釈でしかない。人間は「新たに創りかえられる」必要があるというテーゼと、共産主義的諸々の理想と合体し生まれたのが、スターリン下の悪しき強制収容所というわけである。そして、新たな理想に背くものは、「再教育」という理由で強制収容所に入れられることになるわけだが、「労働者再教育の楽園」なども言われていた矯正収容所であったためしはなく、神話創りのファラオ的大事業に無償労働力を確保するための制度でしかなったことは、周知の事実である。(shibaさんが紹介している「クラフチェンコ事件」について発表なされた、パリ第8大学の歴史・文学研究者、クロード・ムシャール(Claude MOUCHARD)名誉教授が述べていたが、一定の労働者確保のためには理由なしに送還されていった市民も多くいるという。カフカですら仰天するだろう。ツァーが運河建築を断念した原因は、コストがかかりすぎるということだったらしいが、スターリンが成し得たのも、労働力がタダ同然であったからだ。)そして、まさにこの「新しい神話の書を作る会」にスターリンによって召喚されたのが、120人の著作家というわけである。
スターリン神話の旗持を強いられた著作チーム。これはゴーリキーによって33年の夏に構成された。当時の出版業界の不況(他の業界もそうだが)にあったということ、そして前もって約束された仕事と報酬の魅力から、召喚された著述家らの多くは引き受けることになる。ブルガーコフなど依頼を拒否した作家もなかにはいたとされるが、そういった者らが後に強いられた境遇は悲惨であったと報告される。一方で、魂を売った著述家らは、完全に政治的機械の一部と化し、地位的には上級高官に属することになった。著作家一行は建築現場へと、OGPU(KGBの前身)の同行でもって視察に行った。その時の待遇は非常によかったと報告されている。過酷な状況で奴隷のように働く囚人らを前に、彼らが何を感じたのであろうか?これを問題の書から見出すことを期待しても無駄である。そもそも「ベロモルカナル建設についての書」は、120人の著作家に、OGPUが囚人らの証言や統計的・歴史的ドキュメントを称して配布された資料体をもとして、各自がまとめ上げた後、数回の校正を経て編集されたものだからである。視察旅行に参加した著作家による生の証言は、当時最年少だったアヴデーエンコが、89年に出版した自伝のなかで多少触れられている。~至る所に幸福が掲示されていた。「再教育」というものが、迷える人々を救済するチャンスとしてあった。・・・同行しているチェキストらに質問すると、すぐに適切な答えが返ってきた。しかし、ひとつだけ答えてくれない問いがあった。どうしてここには墓地が存在しないのか?病院が不在なのはなぜか?という問いであった。~(自伝)
最初から出鱈目の資料体をもとに、120人の著作家によって書かれたテクストを編集した責任者は、V.イワノフとV.シクロフスキーであった。前者は才能ある小説家として当時知られており、後者は優秀な理論家で「フォルマリスト」というグループに属していた。彼らが具体的にどのように編集を遂行したのかは、よく知られてないとのこと。完成した書の巻末には、アルファベット順に36人の著作家の名が列挙されているが、なぜこの36名が選出されているのかは全く不明であるという。ただ、多くの著作家らによる共同作品ということと、編集にあたり映画から借りてきたモンタージュの手法が駆使されていることが強調されているとのこと。そしてこれらの二つの点が、文学様式の面において革新的であったことは、当時の批評によって持ち上げれている点でもある。例えば、「ソ連の作家らの社会主義的共同作業という新しい実験。グループや学派の彼岸にある、文学における集団的創造による最初の作品」(ガゼタ紙33/12/23)「新様式で書かれた集団性的作品。すべての件は、作家一同によって熟考されたものである。お互いが補足し合った資料に基づいている。」(プラウダ紙33/12/7)こういった書評のなかにも、しっかりと新たな理想のプロパガンダのエッセンスが注入されていることに気づかれるだろう。つまり、スターリンが美化する「集団労働」の理想というものが。。。共同制作をするように要請された作家たちが、理想の労働モデルを表象するものとして利用されたというわけである。
またこの書の美学的革新性として、シクロフスキーが援用する理論も興味深い。彼によると、「ベロモルカナル建設についての書」は、成功を博した映画作家の手法が応用されている。この書が、製作に参加した作家すべてのものであることは、明らかなことである」と述べられている。ここでは、アイゼンシュタインによって創造されたモンタージュの技法についてが語られているが、映画で生まれたこの技法が、演劇に応用されたことで、視覚芸術の革新につながったとされている。そして今や文学が、それに追従する番であると宣言しているわけである。そもそも当局によって提供された資料体がもとになっていることは、すでに触れた通りである。そしてそれのブリコラージュでしかない限り、最初からまったくのフィクションであり、国家理由によって調節された作品でしかない。国家に奉仕する文学は、文学そのものの自己破壊ということである。似非美学論でもって自己弁護する、シクロフスキーの悲劇とも言える。また、集団性を強調したところで、それが意味することは結局のところ、各作家が甘んじた偽装行為に対する責任追求から逃れるための、美学的アリバイでしかなかったことが、発表の最後にEPELBOIN助教授によって述べられていた。

エピローグ)この「幻の書」は、89年にゲリラ的に再版される。(出版社などの詳細は不明。)60年後に再版されたことについて出版社Xは、「われわれの過去をあるがままに記憶に留めておいてください。この事実についての判断は差し控えるにせよ、われわれは知っておくべきことです。過去が不在であるということ、つまりは未来さえもが存在しないというわれわれというものは、いかなる国民なのでしょうか?」という呼びかけがクレジットされている。この再版によって論争が再熱したかに思われたが、一時的なものに終わってしまったとのこと。(ソルジェニーツィンらのグループと、過去をなかったこととして葬ろうとする陣営-デリダのアナグラムで言うなら、SPECTREに対してまったくRESPECTを欠いた陣営-との間での論争。後者の言い分に見るものはないが、強いて言うなら、先に言及した美学的革新性を評価するということに焦点が置かれたとされる。)

---
いくつかの写真が見れるサイト
http://geoconfluences.ens-lsh.fr/doc/etpays/Russie/RussieFaire.htm
http://www.osa.ceu.hu/gulag/c.htm
http://www.iisg.nl/collections/belomorkanal/
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2006.12.07[Thu] Post 02:45  CO:0  TB:1  政治  Top▲  このエントリーを含むはてなブックマーク 

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